地獄の返品女アザミ

思い出を食べて生きている

束縛男H ①

人の愛情をはかるのは簡単だ。

時間・体力・お金をどれだけ費やせるか、本当にただそれだけだと思う。

大抵の場合、どれも愛しい我が子には惜しみなく注がれるものだ。

 

Hは私が23歳の時に婚活で出会った男だ。

Hは精悍な顔つきに似合わず、とにかくお喋りで自意識過剰な男だった。

どれくらい語り野郎かと言うと、産まれてから現在の彼に至るまでの人生を、出会ったその日の帰りには全て知っていたくらいだ。

彼の人生を要約すると、始めにコピーライターになったけれどツテで台湾の日本語学校の先生になり、その後親の金で柔術整復師の資格を取って、親にもらった土地に親に借りた金で整骨院を建てた、ってことろ。

それらはさも素晴らしく数奇な人生であるように熱心に語られたけど、私は4時間近くあくびをかみ殺すのに必死だった。

あくびしても良かったんだけどさ、初対面で失礼かなと思って。

 

この後もHからの猛烈なアプローチは続き、なんとなく付き合うことになる。

私はいつも「来るもの拒まず去る者追わず」のスタンスだ。失うものがない場合はね。

 

Hは時間と体力は惜しげも無く捧げる男ではあった。

身体がダルいと言えば、片道3時間かけてマッサージをしに来て(さすが整骨院院長)また朝方去っていくような優しさもあった。

 

ただ「いつもずっと一緒だよ」と言われたり、「アザミちゃんをガラスケースに入れておきたい。天気がいい日に風を通したり、羽の埃落としで磨いたりして世話をしたい」と言われた時は、本当に気色の悪い奴だなと思っていたけどね。

あと、カジュアルなレストランとかだと奥のベンチタイプの席に並んで座りたがり、30代後半にもなって「あーん」とか平気でやってくる姿には殺意を覚えていた。

 

さらに、Hはクソドケチな男だった。

初めて会った日、私が夕飯のお礼にと買ったコーヒー代の領収書まで貰っているのを見た時は、その浅ましい発想に目から鱗が落ちた。

外食は非経済的だと思っているようで、ロマンチックな夜景を見た後でも、そそくさと家に帰って食事を作る。まあ作ってくれるんだから文句はないんだけどさ。

 

一番せこいなと思っていた話は、Hは必ず片道3時間かけて私を最寄駅まで送り迎えしてくれるんだけど、絶対に駅は出ないの。

Hの最寄り駅は無人改札だから、ICカードを通さなければ無銭乗車する事が可能だからだ。

信じられる?

仮にも先生と呼ばれる人だよ?

整骨院なんて人気商売なんだから、地元で噂が回ったら自分の経営に響くってどうして気がつかないのか不思議だった。

そういう狡いタイプが私の人生にはいなかったので、非常に物珍しい気持ちで付き合っていた。

 

それとHはマザコンだと思う。

いわゆるママの言うとおりタイプでは無く、甘ったれた性格故にママの有難さが分からずに横柄に振る舞うタイプ。

よく「自分の力でここまで上り詰め今がある」と語っていたけれど、それは違うだろと思っていた。

Hは社会人になってもなお親の脛かじって学費を出してもらい、土地をもらい、お金を借り、毎日手作りのお弁当まで家まで届けてもらって、挙げ句の果てには「母親は専業主婦で誰も雇ってくれないけれど、自分は経理事務の手伝いだけで8万円もお小遣いをあげている」などと宣っている、最強の甘ちゃん野郎だ。

付き合ってHの家に行く度に、こいつは本当に謙虚さのカケラもない親不孝な奴だなと、Hの両親を哀れに思っていたものだ。

そんな甘ちゃんに育てたのはその親なんだから、どんな扱いを受けていようが私には関係ないんだけどね。

 

あ、それと誕生日プレゼントも酷かったな!

私の24歳の誕生日に貰ったものは、K10に1ctのイミテーションダイヤがついたネックレスと、お揃いのイミテーションダイヤで囲まれたブレスレット。

イミテーションダイヤならそう言えばいいのに「すごく高かったけど頑張った」みたいなことを言って、恭しく渡されたのも腑に落ちなかった。

もしも私が本物のダイヤだと信じてこの先ずっと大事にしていたら、罪悪感に苛まれないのかな。

第一に私はお母さんの影響でジュエリーには煩く、K18以下は金だと認めてないしイミテーションダイヤなら貰わない方がマシだと思っている。

まあ本物だとしても24歳の誕生日にそんなギラギラしたアクセサリーは不相応だよね。

 

とにかくこの時は、「プロフィールに書いていた年収よりも、実際はもっと稼いでいる」などとよく自慢してきてたものだから、随分と恩着せがましい事を言うものだと感心してしまった。

 

金持ち自慢することが悪いとは思わないけれど、見合ったお金の使い方じゃない人はみっともないよね。

 

この男はいくら素晴らしい物語を語ったところで、当の本人は随分と格好の悪い人物だなと思いっていた。

 

 

 

本当はクロベエさんの写真を載せたいけど倫理的にダメだろうから、当時飼っていたハムスターのユキちゃんをお見せするよ。

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ユキちゃんのこと大好きだったな。

白い生き物って大好き。

 

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続きはまた明日かくよ。

それじゃ!